高校見学
中学校の夏休みに僕と長男は高校見学に行った。
一つは音楽科のある高校。後二つは普通科の高校。計3校。
どれも雰囲気のいい学校だった。しかし長男の勉強レベルではどの高校も合格は非常に難しい。
とくに音楽科のある高校は5教科350点が最低ライン。ピアノの実技もすごく難しい曲だ。幼稚園からピアノ教育を受けている子でないと難しいかもしれない。
長男は県模試、5教科で計35点。 ピアノは小5から・・・・不可能だ。
一応どんな学校か見てみたいと長男が言ったので高校生活の雰囲気だけでも見れたらと思い、見学をしただけのつもりだった。
そして夏休みが終わり学校へ登校していきなり長男をいじめる同級生達に「お前、あの音楽科の高校に見学行っただろ。受かるわけねーのに」とみんなに笑われたと言っていた。その高校には普通科もあるから、見学会の時に同級生に見られたのかもしれない。
この話を聞いたときはとても悔しかった。長男も悔しく辛かっただろう、、しかし、、、しかし
確かに合格は不可能に近い。っていうか不可能だ。
中学校の担任からは「大変残念ですが、この周辺で行く高校はありません。私立も公立も行ける高校はありません。
少し遠くですが特殊な学校があるのでそこを卒業すれば高卒になりますので、その学校にしましょう」
と言われた。
まぁ、覚悟はしていた言葉だ。仕方がない。
その特殊な学校に入ってもピアノのレッスンとブラジリアン柔術は続けられる。
音楽家や格闘家で食べていくチャンスが消えたわけじゃない。今はみんなにバカにされて悔しくて辛いが、将来、絶対にバカにしたやつを見返すくらいのピアニストか格闘家になればいいと思った。
とりあえず高卒にしておくために、担任の先生から勧められた○○学園という特殊な学校に行かせようと思った。
僕と長男は無言で一緒にアパートに帰り、長男は無言で自分の部屋に入っていった。
僕は夕食を作りながらいろいろ考えていた。
担任の先生に勧められた特殊な学校は私立だ。学費・交通費などなど、考えるとため息が出た。どーやって家計をやりくりしようって悩んだ。
そして食事が完成し長男次男と一緒に食べた。
雰囲気が暗かったので次男が僕に話題を振った。何の話題だったかは忘れたけど、この雰囲気を打開するために次男と笑いながら話した。
その時、長男がボソっと何か言った。
小声だったし音楽も流れていたので何を言ったのかわからなかった。
長男にもう一度聞き直した。
え?なになに?って
そしたら長男はまたボソっと言った。
「お父さん。僕、音楽科の高校行きたい。」