高い目標

長男の成績では高校の音楽科は到底無理。

 

しかし、長男はボソっと「行きたい」と言った。

 

大好きなグランドピアノが50台近くあり、スタインウェイの高級ピアノもあった。バイオリンやコントラバス。色々な楽器を生徒たちが楽しく弾いていた。長男にとっては夢のような世界だったのだろう。

 

それに中学校の生徒たちから無理だと笑われたのも悔しかったのだろう。

 

彼の行きたいという切実な思いが痛いほど伝わってきた。 

 

なんとかしてあげたい。行かせてあげたい。

 

あと半年も無かった。

 

しかし、やれるだけやってみようと決意した。

 

ダメで元々。

 

合格しなくても努力した事は 無駄にはならない筈だ。

 

先日の柔術の試合も負けてしまったが、やれるだけの事をやった彼はさっぱりしていた。彼はきっと頑張るだろう。

 

目標はピアノのレベルアップと5教科30点台の成績を350点までアップさせる必要がある。

自閉症と診断され、話す言葉も、言葉の理解もかなり遅れている。勉強も小学校3年生の教科書からやり直ししなければならない。

 

僕一人では無理だ。まず協力者を探すことにした。

 

まず、現在習っているピアノ教室の先生に会いに行った。

 

町の中にある主婦の方が自宅の2階で教えているピアノ教室だ。

 

息子が音楽科の高校に入れるようにレッスンしてほしいとお願いをした。

最初は無理だと言われた。

合格しなかったからと言って苦情を言うつもりはさらさらないし、彼がどこまでできるのか見たい、やれるだけやってほしいとお願いした。

先生は不安そうな表情だったが引き受けてくれた。

申し訳ない気持ちと感謝の気持ちでいっぱいだった。

 

あとは学科だ。

 

長男のレベルでは塾は無理だ。ついていけない。

家庭教師しかない。

しかし・・・金がない・・・ほんとうに金がなかった。

万事休す。